『E2 異常高値』で検索してみると「やっぱり・・・」と思うものがありました。
(約10年前、平成12年3月のものです)
(原文は↓こちら↓)タモキシフェン投与により高エストラジオール血症を伴う両側性卵巣腫大をきたした1例http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=joma1947&cdvol=112&noissue=3-8&startpage=89&lang=ja&from=jnlabstract(↓抜粋↓)
タモキシフェンは
エストラジオールのエストロゲンレセプターへの結合を競合的に阻害するが,
その結合能はエストラジオールの約0.7%-1%と報告されている
タモキシフェン20mgを経口投与24時間後の
血中タモキシフェン濃度は約100nMであり
その半減期は7日であったことから,
通常投与量では約1nMのエストラジオールと拮抗する.
このエストラジオール濃度は
正常の閉経前婦人のエストラジオール量より高く,
タモキシフェンのエストロゲン拮抗剤としての作用を裏付けている
しかしながら,
エストロゲンがそれより少しでも高い場合や
血中タモキシフェン濃度の低下のある場合には
その効果は急速に失われ
乳癌のホルモン療法剤としての意義を失う.
ホルモン環境は個人差が大きく,
また同一個人においても変化の幅が大きいため,
タモキシフェンの長期投与におけるホルモン環境における影響には
未だ検討すべき点が多いが,
Ravdin氏らは卵巣機能の残存している19例のうち13例で
タモキシフェンによるエストラジオール高値が見られたと報告している
安村等もEstron sulfateを測定し同様の報告をしており,
閉経前乳癌患者におけるタモキシフェン投与に注意が必要としている
すなわち
タモキシフェンの投与がかえってE2を増加させ
乳癌の発育を促進する可能性があり,
卵巣機能が旺盛な症例においてタモキシフェンを用いる際には,
十分な注意が必要であると考えられる.
本症例のように
タモキシフェンによると考えられるE2の高値のある症例や,
閉経前で比較的エストロゲンが高いにも関わらず
服薬のコンプライアンスが悪いような症例においては,
タモキシフェンとLH-RHアナログの併用
もしくはLH-RHアナログの単独投与が適当と考えられる.
また従来卵巣腫大,子宮内膜増殖は
タモキシフェンのエストロゲン作用によると考えられているが,
それとは別に本症例の如く
E2の増加によるものの可能性があり,
そのような症例においては
・E2, FSHの定量,
・タモキシフェンの中止,
・LH-RHアナログの追加
などの適切な処置が必要と考えられる.
閉経前乳癌における化学療法の効果は
卵巣機能阻害にあることが推察されていることからも,
閉経前乳癌におけるホルモン療法は非常に重要な位置づけにある.
タモキシフェンによる有効な治療を行うためには
投与経過中のE2の測定,コンプライアンスのチェックなどの注意が必要である.
またタモキシフェンは安価で患者QOLの点からも使用しやすい薬剤であることから
そのホルモン療法における重要性には変わりなく,
今後は閉経前のホルモン環境によるより厳密な適応を検討する必要があると考えられる.
結語
タモキシフェンによる高エストラジオール血症と卵巣腫大をきたした症例を経験した.
このことから,
1. 閉経前症例においては
タモキシフェンの投与がかえって
乳癌発育促進に働くエストラジオール高値をきたす可能性がある.
2. タモキシフェン投与中の卵巣腫大,内膜増殖は
エストラジオール高値が原因であることがあり,
タモキシフェンの中止,LH-RHアナログの使用などを考慮すべきである.
ことを念頭において治療を行うべきであると考えられた.